昼下がりの領事(学生記者取材) Vol.7 ー 在京都フランス総領事館 ー

レポート

フランスはヨーロッパの西端に位置する国。日本から飛行機で約12時間半と少し遠いイメージですが、この国を知らない人はおそらくいないでしょう。国土面積は551,500㎢で日本の1.5倍。海外領土も含めるとなんと674,843㎢にもなります!世界有数の観光立国でもあり、コロナ前の2019年には海外からの旅行者数は8,686万人と世界第一位でした(ちなみに日本は12位)(*1)。それほど多くの人が訪れるフランスの魅力とは一体何なのでしょうか。外交官の魅力は「自分の国を代表していろんな人と会って話ができることだ」と語る、在京都フランス総領事のジュール・イルマン(Jules IRRMANN)さんにお話を伺いました。(浅田・野村)

(取材日:2023年1月25日)

「ビックリフランス!」というタイトルで始まったイルマン総領事のお話

フランスの国旗

*1 国連世界観光機関(United Nations World Tourism Organization)の調べによる(https://unwto-ap.org/)

 

舞台はパリの街 スポーツの祭典

記憶に新しい東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。その閉会式では、オリンピック旗・パラリンピック旗がそれぞれ東京からパリへ引き継がれました。2024年夏、パリで世界最大規模のスポーツの祭典が開幕します。

古代ギリシャで行われていたオリンピックが近代に復活したのは、1896年アテネ大会。その立役者がフランスの教育者ピエール・ド・クーベルタンでした。フランスは、オリンピックゆかりの地なのです。前回パリで夏季オリンピック大会が開催されたのは、1924年。このとき、オリンピックとして初めてラジオで大会の模様が報道されました。

2024年のオリンピック開催地はパリ

それから100年。2024年のパリ大会も、これまでにないオリンピック・パラリンピックになりそうです。「オリンピックの開会式はセーヌ川で、パラリンピックの開会式はコンコルド広場やシャンゼリゼ通りで行われます」とイルマン総領事。「Games Wide Open(広く開かれた大会に)(*2 )」を掲げるパリ大会では、エッフェル塔周辺やヴェルサイユ宮殿などフランスのランドマークが競技会場として使用されます。街全体をスポーツ会場として活用する、これまでにない試みです。

パリ大会ではパリの街全体が競技会場となる

開会式はセーヌ川で

環境問題への取り組みが官民問わず広がるフランス。イルマン総領事は、「オリンピック・パラリンピックも、できるだけ無駄を出さない大会にすることが重視されています」と話します。パリ大会では、新設する選手村とアクアティクスセンターを除き、全ての関連施設が既存または仮設の設備でまかなわれます。サステナブルな大規模イベントの姿を探る先行例となりそうです。

「とても面白い大会になると思います。夏休みを利用して、ぜひオリンピック・パラリンピックを観に来てください」とイルマン総領事。熱気あふれるパリの街で、次世代のスポーツ大会を体感してみたくなりました。(三原)

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*2訳語は以下を参照:https://olympics.com/ja/news/register-for-chance-to-be-drawn-for-first-ticket-phase-paris-2024

その他パリ大会について以下を参照:https://www.paris2024.org/en/

知られざるフランスの料理

フランスと聞くと、華やかで高級感のあるフランス料理やスイーツを想像する人が多いでしょう。総領事もフランスの特徴の一つとして食文化を例に挙げていらっしゃいました。フランスは日本のように地域ごとに独特の食文化を発展させていったため、様々な郷土料理があるそうです。そのため、フランス国内を一年旅行しても、毎日違う料理を楽しむことができるそうです。

日本でも様々な種類のフランス料理が楽しめますが、まだ日本ではあまり馴染みのない料理やスイーツはあるのでしょうか?総領事に伺いました。

フランスは華やかで可愛らしいスイーツがたくさんあるというイメージを持っている日本人は多いと思います。クレープやエクレア、マカロンやカヌレなどあまりにも日本の食生活に浸透していて、フランスのスイーツであるということを忘れてしまうほどです。まだ日本では知られていないスイーツで、私たち日本人にぜひ食べてほしいと思うフランスのスイーツはあるのでしょうか。またそれはどんなスイーツなのでしょうか。

フランスのスイーツ!(提供:在京都フランス総領事館)

日本のパティシエはとても優秀で、今年開催されたパティシエのワールドカップでは地元フランスを抑えて、日本が優勝したほどです。日本にいてもたくさんのフランスのスイーツを食べることができ、味もフランスのものと遜色ないほどだそうです。総領事が一番好きなフランスのスイーツは、「サントノレ」(Saint-Honoré)というスイーツでこれは日本ではまだほとんど見られないものだそうです。サントノレは、丸く焼いたパイ生地を底にして、小さく焼いたシュー生地で周囲を飾り、キャラメルを接着剤としてシュー生地をパイ生地の周囲にくっつけ、クレーム・シブーストを絞ったスイーツです。

総領事のお勧めはシュークリームの進化型、サントノレ(イメージ)

フランスにあるリヨンという町と日本の大阪に意外な共通点があることをしているでしょうか。どちらも交易で発展した都市で、全国各地から様々な食材が集まることで豊かな食文化を育みました。リヨンは「美食の町」、大阪は「天下の台所」という別名がついたほどです。

リヨンの街並み ― 2025年大阪万博で注目を集める大阪とは共通点は多い

  —数あるリヨンの料理の中で有名な「クネル」というオーブン料理に興味をもったのですが、これはどのような料理なのでしょうか。また総領事のご出身地の名物料理にはどう言った料理があるのでしょうか。

クネルは白身魚(鯛など)のすり身をオーブンで焼いた料理です。日本でいうところのはんぺんと言えるでしょう。クネルの他にもリヨンは内臓を使った料理が有名で、種類も豊富だそうです。総領事もリヨンの料理は大好きだそうです。

また、総領事はスペインとの国境近くの南フランスの出身だそうで、海の幸、山の幸がふんだんに使われていることが特徴だそうです。中でも総領事の好きな料理は、ガンバスと呼ばれる大きめのエビと、鶏肉をソテーし、ソースで絡めたものだそうです。総領事のお母様がよく作ってくださった家庭の味だそうです。

地方にはその土地特有の豊かな食文化がある(提供:在京都フランス総領事館)

日本ではまだ馴染みのないフランス料理を紹介してくださいましたが、どれもとても美味しそうでした。日本で食べられる日が来ると良いですね!(小杉)

 

フランスのファッション・美術・文化にビックリ!

高級ファションブランドのリーダーとして世界を牽引するフランスですが、ファストファッションにはどのようなものがあるのか伺いました。

フランス人のファストファッションとはどのようなもの?

フランスにおいては、日本と同様ユニクロは大変人気があるそうです。そのほかにもZARA、南フランス発祥のアッシュ・エルというブランドが存在し、人気を博しています。

主流はエレガントスタイルであり、多くの人はハイブランドの洋服を着こなすのではなく、アクセサリーなどを高価なものにして、洋服をファストファッションなどでコーディネートする組み合わせをする人が多くいるとわかりました。

ファストファッションに高価な小物を組み合わせるのが今風(イメージ)

さらに、若者を中心には古着が人気だそうです。特に、環境への配慮、リユース製品を使おうという意識を持つ人が多く、古着の需要はより高まっているそうです。また、新品の服を買うよりもコストを抑えることができることも、若者に人気の理由の一つであるといいます。

近年日本でも、若者を中心に古着を好む人が多くいますが、古着特有のヴィンテージ感、レア物に出会えるといった好奇心で古着を好む人も多くいます。フランスのように、古着の良さはテイストだけでなく、リユースをすることで環境に配慮した行動の一つになるという意識が素晴らしいと感じました。

フランスのフリーマーケット ― 思いがけないヴィンテージものが見つかることも

“芸術の都”として名高いパリを首都に持つフランスではどんな美術館が人気であるのか、また総領事のおすすめ美術館を、今はあえてルーブル美術館以外で伺いました。

地元パリジャンには、ポンピドゥー・センター(Centre Pompidou)が人気であるそうです。ポンピドゥー・センターは世界最大級の規模で近代美術・現代アートの展覧会や回顧展が開催される美術館でありながら、公共図書館なども入る複合施設となっています。

建物外観は階段、柱、電気や水道などの配管が剥き出しになっている状態であることが最大の特徴で、このことは建物内部にスペースを十分に確保できる利点につながります。機能美さえも追求された建築自体は一つの芸術作品として高く評価されています。

パリ4区のサン=メリ地区にあるポンピドゥーセンター

また、総領事おすすめの美術館は、ニッシム・ド・カモンド美術館です。この美術館は、モイーズ・ド・カモンド伯爵が、自らの邸宅をそのまま美術館にし、公開、伯爵自身の美術品コレクションを展示しています。ニッシム、とはモイーズの息子の名前が由来とされています。18世紀の絵画作品はもちろん、お皿のコレクションやセーブル焼きなどの調度品、部屋や室内装飾、家具などを楽しむことができます。

フランスでは、成人を迎えた人々に、300ユーロ(€)(日本円で約4万円)のクーポンを渡す制度が存在します。このクーポンは、国内の美術館や博物館、スポーツ観戦時に用いることができるもので、パスカルチャー(Pass Culture)といいます。国全体で、国民の文化に対する興味を奮い立たせる制度がとても羨ましく感じました。また、ルーブル美術館は年パス制度があり、一人80ユーロで購入することができます。しかしペアでの購入となると120ユーロで、一人あたり年間60ユーロでルーブル美術館の、世界に誇る至宝の数々を見ることができます。家族や友人、恋人を誘うことで、一人でも多くの人が、お得に、世界に誇る自国の芸術文化に触れることのできる制度が整っているとわかりました。総領事のプレゼンテーションはもちろん、自分の興味ある分野について深く尋ねることができ、さらにフランス生活への憧れが強くなりました・・・!(黒澤)

駅舎にも芸術が感じられる

 

日本人に知って欲しいフランス文化とは

世界一オシャレな国はどこかと聞かれた時にあなたはどこを思い浮かべますか?私を含め、フランスを思い浮かべた人は少なくないはずです。そんなフランスからいらっしゃったイルマン総領事に「日本人に注目して欲しいフランス文化は何か」をお伺いし、2つ教えて頂きました。

1つ目はフランス映画です。
 フランスの映画はハリウッド映画のようなアクションシーンが多い訳ではないですが、映画が終わった後に映画を思い出して考えさせられるのがフランスの映画の特徴だと教えていただきました。確かに多くの日本で暮らす人にとってフランスの映画は馴染みが薄いかもしれませんが、多くの日本人受賞者も輩出しているカンヌ国際映画祭はフランス南部地方のカンヌで毎年5月に開催され、ベルリンやベネチアと並んで世界3大映画祭に数えられています。

2つ目はフランスで暮らしている人々のライフスタイルです。

フランスのカフェでくつろぐ人たち

フランスで暮らす人々は「時間の無駄」を惜しみません。自分の為の時間をしっかり確保し、余裕を持った生活を楽しむのだと教えて頂きました。そして、その余裕こそがフランス人らしさを作り上げたのだと気付きました。「せっかち」で有名な関西人の私もイルマン総領事に教えていただいた余裕のつくり方「喫茶店のテラスでコーヒーを飲みながら行き交う人々を見る」を実践したくなりました。

そしてイルマン総領事は日本のアニメや漫画がフランス文化に与えた影響などについて教えて下さいました。そして、そのお話からフランスと日本の友好関係はお互いの文化が刺激し合うことで構築されているのだと感じました。

日本のアニメはフランスでも人気(提供:在京都フランス総領事館)

フランスで人気のある漫画(提供:在京都フランス総領事館)

フランスと日本は飛行機で15時間の距離にありますが、インタビューを通じてフランス文化により興味と親近感が湧きました。春休み中にイルマン総領事が仰ってたアラン・ドロン氏の主演する映画、Plein Soleil(太陽がいっぱい)を鑑賞しようと思います。(森本)

 

フランスの若い世代について

日本の若者は親世代と比べて不安が多く、未来に希望を感じている人が少ないと言われています。私たちと同年代のフランスの若者たちはどうなのでしょうか?彼らのライフスタイル・思想は、親世代と比べてどんな違いがあるのか聞いてみました。

フランスの若者は世の中とどう向き合っているのか(イメージ)

イルマン総領事によると、フランスの若者は彼らの親世代と比べ環境問題に大きく悩み、考えているそうです。総領事にも私たちと同じ世代のお子様がいらっしゃるそうで、「水を出しっぱなしにしない」など、日常生活で気を付けているそうです。

フランスは日本に比べ、リサイクル商品の開発や販売、規制などが大きく進んでおり、CO2排出量も、原子力発電で必要な電力をまかなっているため少ないという特徴があります。

フランスにおける大気汚染対策(提供:在京都フランス総領事館)

これらの特徴は、持続可能な社会の開発、環境問題に国として取り組むという意味ではとても重要であり、尊重されるべき考えですが、これらの思想が強くなりすぎてしまうことで若者に対して、社会に対する恐怖感、不便を強い、その結果として将来に対する不安を作ってしまっているという一面もあります。

フランスの学校では近年、幼い頃から環境と向き合う方法を教えているそうですが、それらの教育は、世界的解決、減少があまり見られない問題の場合、精神的に大きな負担を強います。そのため、環境問題に対する考えと、自分の幸せ、生活の便利性との兼ね合いを重要にするべきとの意見を持っている人もいます。

各国のSDG比較(提供:在京都フランス総領事館)

日本はプラスチックゴミが世界で見てもかなり多い国のため、プラスチック消費量を減らす取り組みをフランスを見習って促進し、フランスなど一部の国だけで無く、先進国の一員として環境問題の解決に尽力するべきではないでしょうか。(子田・杉浦)

 

フランスのおすすめの観光地について

2024 年のパリオリンピックを見た後、どこか近場で旅行をしたいと思いませんか?そこでパリ周辺で立ち寄るならどこがおすすめかきいてみました!

フランスの新幹線TGV(テージェーヴェー)

イルマン総領事によると、フランスには TGV (テージェーベー)という新幹線がパリから放射線状に通っていて、約 3 時間あればどこでも行くことができるそうです。例えばフランスの北西部に位置するバスク地方では、オリンピックの後に海のスポーツが楽しめます。どの地方も特色があって美しいのですが、近場の観光地だとロワール城やブルターニュ地方などがおすすめだそうです。

ロアールにあるシュノンソー城

これもロアールにあるブロア城

旅行に出かけたときには是非ともその土地特有のものを食べてみたいですね!日本でもフランスの様々なスイーツが食べられるようになりましたが、本場のものはやはり少し味が違うそうです。本場のガレット・デ・ロワはどんな味だろう?!想像が膨らみます。

皆さんもパリオリンピックを機に、まだ行ったことのないフランスの地方を訪れて、まだ食べたことのないフランス料理を体験してみませんか!(檜垣・荻野)

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レポート:

ジュール・イルマン総領事、学生記者のみなさん、IAC理事

■大学生記者■(五十音順)

黒澤莉沙子(実践女子大学)

小杉友香(国際教養大学)

三原黎香(上智大学)

森本裕也(近畿大学)

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■高校生記者■(五十音順)

浅田庄太郎(AIE国際高等学校)

荻野ゆず葉(AIE国際高等学校)

子田あおい(AIE国際高等学校)

杉浦彪臥(AIE国際高等学校)

野村龍馳(AIE国際高等学校)

檜垣茉歩(AIE国際高等学校)