昼下がりの領事Vol.1 在大阪・神戸インド総領事館

レポート

こちらのページでは個人的に国際交流活動をしている会員のレポート記事をご紹介していきます。
栄えある第1回は古賀玲子さん、IAC会員で関西在住です。
IACのコーディネーターとして今後も関西の領事館取材を続け
「昼下がりの領事」をシリーズ化していきますので、お楽しみください。
2025年大阪万博開催を前に盛り上がっていく関西での国際交流イベントにも、
古賀さんを窓口にIACも協力したいと考えています。

 

昼下がりの領事Vo.1 「カレーだけじゃない、インド」在大阪・神戸インド総領事館

インドは人口13億人の南アジアの連邦共和制国家。2000年前後から日本に住むインド人の数は急速に増加。インドヨガやボリウッド映画産業などもすっかりおなじみになりました。しかし私たちが知らないインドがまだまだあるようです。

■インド人の9割は脱いでいる

今回私たちが向かったのはインド総領事邸。神戸の山の手に建つ瀟洒なお宅です。
彫刻で飾られた玄関を潜ると奥の広い客間へ。チャングサン(Changsan) 総領事 とバーノット(Bhanot)副領事が迎えてくださいました。

ブルーをベースに白のブラウスが良くお似合いの総領事。そしてカラフルな中にも奥ゆかしさを感じさせる副領事のコーディネート。インドの方はとてもおしゃれですね!

しかし・・!私は思いました。

ターバンを巻いたインド人は一体どこに行ってしまったのか?

チャングサン総領事

日本でインド人といえばターバンというイメージですね。某食品メーカーのカレーのパッケージにもターバンを巻いたインド人の絵が描かれていました。ところが実際ターバンを巻いているインド人はほとんど見かけません。総領事ご自身もターバンを巻いていらっしゃいません!

「インドでターバンを巻いている人は人口の10%に過ぎません。そしてそのほとんどがパンジャブ地方などの西部に住んでいるインド人です」

なるほど。ではあのパッケージに描かれたインド人はパンジャブ地方の出身で?

「ターバンには2種類あります。ひとつはシーク教徒が宗教上の理由から身に着けるもの。そしてもうひとつは帽子や日よけとしての役割を果たすもの。結婚式では民族衣装として被ったりもしますね」

結局パッケージのインド人はパンジャブ人かどうかわかりませんでしたが、「インド人=ターバン」はかなり偏ったイメージだったということですね。

インドの書籍、領事邸の装飾品など

■関西のインド人コミュニティー

総領事は神戸にお住まいですが、職場であるインド総領事館は大阪にありますね。

「はい。インドの総領事館はもともと神戸にあったのですよ。1990年代に大阪に移転しました。しかし神戸には多くのインド人が住んでいるので、大阪移転後も彼らが迷わないように、在大阪・神戸インド総領事館を正式名称にしています」

確かに全国的にはあまり知られていませんが、神戸には古くから多くのインド人が住んでいますね。

「神戸のインド人は神戸港が開港された明治時代から数世代にわたって暮らしています。かつて横浜港付近にも多くのインド人がいましたが、1923年の関東大震災後、彼らは神戸に引っ越してきました。そのため神戸で多くのインド人が見られるようになったのです」

バーノット副領事

なるほど。東京の江東区や江戸川区にもインド人が多く住んでいることで有名ですね。東京と神戸のインド人コミュニティーの違いは何でしょう?

「神戸など関西のインド人は3代目や4代目の世代で構成されています。東京のコミュニティに比べると長い歴史があります。東京の場合は最近来日したITエンジニアが中心ですからね。比較的新しいコミュニティーになっています。それに対し、神戸のインド人は性格も日本人に似ていますね」

神戸はインド人が出しているお店も多く、特に北野町は多くの雑貨店やインド料理店が軒を連ねています。異人館だけでなく、彼らのお店を巡ってみても面白そうですね。

■世界的に有名なソース

ところで、以前ある会社に勤務していた時、気になっていたことがあります。それは同僚のインド人エンジニアがお昼になるときまって職場近くのインドカレー店に行っていたこと。毎日インドカレー?もしかしてあれは日本人が定食屋に行くような感覚?

「私たちはカレーで育ってきましたからね。確かにたくさんカレーを食べますよ。ただ、私たちのいうカレーは日本人が思っている「カレー」とは少しニュアンスが違います。インド人が「カレー」と言ったとき、それは「ソース」を意味します。」

ええっっ!!カレーは料理の名前ではないのですか?

「例えば、チキンカレーといった場合、それは『ソースがかかったチキン』という意味です。レストランで肉が少し余ったとします。そこで『カレーをください』というと、それは『肉につけるソースをください』という意味なのですよ」

これまでカレーといえば、スープに好みの具材を放り込んだ料理の名前だと思っていました。カレーは実はメインの具材に添える液体または半固形物のこと(それに対し乾燥した粉状のものをマサラというのだそうです)。

将来インドに行ったときに恥をかかないよう、しっかり覚えておきたいと思います!

 

2018年神戸で行われたインターナショナルヨガデー。チャングサン総領事も参加。

 

レポート:IAC会員 古賀玲子(Koga Reiko):
米TV局に勤務後、外資系保険会社の社内通訳に転身。現在はコーディネーターをしながらフリーで通訳・翻訳業を続けている。
海外の文化・踊りに関心が強く、特にアルゼンチンタンゴは現地の選手権に出るほど一時ハマっていた。