学生記者が大使館に聞いてみた! Vol. 1 -サモア独立国大使館-

レポート

日本各地の学生と東京の大使館が繋がった!-コロナ禍の厳しいご時世ではありますが、学生記者による大使館へのオンライン取材が実現しました。記念すべき第一回目はサモア独立国大使館。関西の大学生を中心に結成されたIAC学生記者団のレポートです。Talofa *(タロファ)!  *サモア語で「こんにちは」の意  (取材日:2020年9月25日)

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日本から飛行機を乗り継ぎ、11時間。南太平洋に浮かぶ9つの島からなるのが、サモア独立国、通称サモアです。その総面積は、約2830㎢。東京都の約1.3倍ほどです。そんな小さな国にはたくさんの魅力が詰まっています。そこで今回、私たちは、サモア独立国大使館のファアラヴァアウ・ペリナ・ジャックリーン・シラ・ツアラウレレイ大使(H.E. Faalavaau Perina Jacqueline Sila-Tualaulelei) = シラ大使にサモアについて様々な質問をしてみました。 

 

■サモアは、世界で一番早く朝を迎える島!??

サモアの朝日

海の上でキラキラと輝くこの美しい朝日。

みなさんは、この朝日をどこで見ることができるか知っていますか?そう、サモアです。

島国で自然豊かな明るいイメージのあるサモアにぴったりの写真をシラ大使が見せてくださいました。実はサモアは、2011年12月に日付変更線を東から西に変えたことにより、世界で最も早く朝を迎える国になったのです。

― 美しい日の出を見るのにお勧めの場所はありますか?

「ノースショアがお勧めです。ノースショアは都市部にあって、海辺のどこからでも朝日をきれいに見ることができます。都市のホテルからは毎朝見ることができるんですよ」

サモアの朝日

― いつかサモアでこの美しい朝日を見てみたいです!しかしなぜ日付変更線を変えたのでしょうか?

「主な理由はビジネスの生産性を上げるためです。

サモアはニュージーランドから飛行機で3時間、オーストラリアから7時間のところに位置しています。

ですが、2011年より前、これらの国とサモアとの間には1日近い時差がありました。例えば、サモアが日曜日ならばニュージーランドは月曜日です。私たちが仕事を終えて休む頃、ニュージーランドやオーストラリアではすでに仕事を始めているのです。

サモアが日付変更線を変更し、現在、ニュージーランドとの時差はたったの1時間、オーストラリアとの時差は3時間。この二つの国と同じ日に活動できるようになったことで、コミュニケーションがとりやすくビジネス関係も強固になりました」

― 日付変更線を変えたことによって他にも何か変化はありましたか?

「観光客やサモアの人々の生活をとても便利になりました。例えば、2011年以前は、結婚式やお葬式がニュージーランドやオーストラリアである場合、サモアからは一日前に出発しなければなりませんでした。そのため、一日失うことになってしまっていたのですが、現在は同じ日に飛行機に数時間乗るだけで現地まで行くことができるようになっています。そのため通勤も可能になりました。朝のフライトで現地に到着し、日中は働いて夜のフライトで帰ってくることができます」

 

■ディズニーの大ヒット映画「モアナと伝説の海」の舞台

サモアと言えば、真っ白な砂浜と透き通るような青い海が広がるなんとも美しい国ですよね。そんな大自然が魅力のサモアは、2016年公開のディズニー大ヒット映画「モアナと伝説の海」の舞台となったのです。

―シラ大使は「モアナ」をどのようにお思いですか?

「私はこの映画、そして劇中の音楽も大好きです。映画のメインキャラクターの一人、マウイの声優を務めたドウェイン・ジョンソン(Dwayne Jonson)がサモア人であることはご存知ですか?彼のおじい様もサモア人で、アメリカのプロレスラーでした。その影響からジョンソンも映画俳優としてのキャリアを積み始めたばかりの頃レスリングを始めたそうですよ。またジョンソンは2007年にサモアを訪れたことがあり、そこで彼はハイチーフ(High Chief)の称号を与えられました。このようにサモアとの深い繋がりがあるので、私はジョンソンが大好きです」

― 映画のメインキャストを務めたドウェイン・ジョンソンとサモアとの間に、このような深いつながりがあるとは 驚きでした。

「『モアナと伝説の海』はポリネシア文化が豊富に描かれており、サモア文化もたくさん見ることができます。例えば現代の技術がなかった古い時代、夜に見える星をGPSがわりに航海する方法(ポリネシアの伝統航海術)があり、そこからサモアは航海士(Navigators)と呼ばれていました。映画「モアナと伝説の海」を通して、私たちの文化や国の一端がスクリーン上で見られることをとても嬉しく、そして映画のキャストの一人がサモア人であることを誇りに思います」

シラ大使がお話しされていたように、映画の中で何度かメインキャラクターであるモアナやマウイが夜空に向けて、手の平をかざすシーンがありました。きっとあれは伝統的なポリネシア文化の1つだったのですね。

― 映画が公開されたことで何かサモアによい影響はありましたか?

「映画の描き方、そして当時ドウェイン・ジョンソンがサモアの文化や遺産について話していたおかげでサモアが広く知られるようになりました。そして実際にその文化を体験したくて映画の舞台となったサモアを訪れた人々も沢山いました。

もちろん、アニメーションで文化を最大限伝えるということは難しいですが、伝統的な文化の一つであるタトゥーなど、多くの人がサモアに対する認識、知識を深め、興味をもつようになったと感じています」

オンライン取材の様子

 

■ラグビー強豪国である秘訣

サモアは、2019年のラグビーワールドカップで日本と対決し、日本中を大いに盛り上げました。日本代表の選手として活躍したラファエレ選手の出身国としても注目を集めました。サモアの人たちにとってラグビーは、世代を超えて愛される国民的スポーツで、国民の多くが実際にラグビーをプレーした経験があります。

― 2019年ワールドカップでは、日本代表がサモアチームと戦ったこともあり、日本人の多くがサモアチームの選手の体格の良さに印象を受けました。サモアの食事とラグビーの強さにはどのような関係があると思いますか?

「サモアでは、ラグビーは老若男女問わずとてもメジャーなスポーツです。子供たちは裏庭でラグビーボールを持って走り回っています。サモアの国民は幼少期からラグビーと共に育ち、国内ではたくさんの試合が開催されています。

実は私も大学生の頃、女子ラグビーの選手として試合に出たことがあります」

サモアのチームを応援するシラ大使とサポーター

「ラグビーは体が激しくぶつかり合うスポーツで怪我もしやすいため、しっかり栄養を摂ることと体が引き締まっていることが大切です。サモアでは伝統的な食事として、ココナッツクリーム、タロイモ、バナナ、魚を沢山食べます。サモアのタロイモは日本とは違い、太くデンプンが多く含まれています。だからサモアの選手は体が大きいのですね。

ただデンプンを多く摂取すると体が大きくなりますが、足が遅くなります。15人制よりも少ない人数でプレーし、素早い動きが必要になってくる7人制には向いていないかもしれませんね」

― 食事以外でラグビーの強さの秘訣は何だと思いますか?

「ラグビーはサモアの国技であり、代表に選出されることは国を背負うことになるので非常に名誉なことなのです。そして、代表選手たちは、自分のためにプレーせず、両親・祖父母・出身地である村全体、同じ教会に通う人達のためにプレーしています。そして自分と関わりのある人たちみんなが家族のように応援してくれることをよく理解しています。

私が住んでいた村にも代表選手が何人かいて、私は彼らのことをとても誇りに持っています。人々が選手を手厚くサポートすることも、サモアのラグビーの強さの理由だと思います」

サモアを語る上で国技であるラグビーの存在は欠かせません。

食文化だけでなく、国の代表としてラグビーをする誇り・喜び・責任感をはじめとした思い入れ全てが密接に関わり合い、サモアラグビーを強くしているのだと感じました。

2019年末、日本ではラグビー旋風が起こり、大きな盛り上がりを見せました。そんなラグビーを通して、代表選手だけでなく、日本とサモアの人々が交流する機会が増えるとよいですね。

サモアはタロイモ、バナナ、ココナッツ、魚が豊富だ

 

■サモアの文化を一週間で体感!南国最大のテウイラ祭と異文化理解の重要性

今やリゾート地として青く澄んだ海や緑豊かな自然が印象的なサモアですが、その美しさの背景には自然と共存してきた3000年以上続くサモアの文化があります。そんなサモアの伝統文化が一週間に集約される南国最大といわれるテウイラ祭があります。シラ大使が語るその具体的な内容や開催経緯などには異文化理解の精神が伺えます。

― テウイラ祭はいつから開催されるようになったのでしょうか。

「テウイラ祭は1991年にエコツーリズムの拡大が目的で初めて開催されました。リゾートとしてのサモアだけではなく、歴史や文化、雄大な自然をより多くの観光客の方に感じてほしいという思いから以来毎年開催されています。サモアは1962年に独立したばかりでしたが、私たちは周りの美しい自然やサモアの文化自体が観光業を通して国の発展に繋がることに気づき、テウイラ祭をはじめ、様々な観光業を充実させてきました。また開催当初は観光客を誘致することに苦労しましたが、今はオーストラリアやニュージーランド、フィジー島から毎日飛行機が飛んでいて多くの観光客に来ていただいています」

― そのような背景があったのですね。テウイラ祭ではどのような体験ができるのですか。またテウイラ祭一番のおすすめイベントは何ですか。

「テウイラ祭では一週間ですべてのサモア文化を体感できます。伝統料理やダンスと歌の披露や魚釣り大会、ミスサモア大会などのイベントもあり、見どころいっぱいです!またテウイラ祭は観光客だけでなく、地元の人の間でも有名です。私も街の市場で買い物をして、友達と1時間以上ランチをして楽しみます!このように私たちサモア人もお祭りを通して、自国の文化を伝えること、知ること、守っていくことの大切さを学ぶのです。一番のおすすめはサモア観光局が運営するカルチャービレッジです。そこでは無料で地元の人たちの住む小屋を訪れて籠作りや木彫り、タトゥーをする様子を見学できます。タトゥーはサモアでは重要な伝統の一つなんです。サモアの人たちと直接会話をして現地の実生活を目の当たりにできる機会だと思います」

サモアの文化がスライドで紹介された

― 現地の方からその国の文化について聞ける機会はないので貴重ですね。次に海外に行くときにはぜひサモアを訪れたいです!

「ぜひいらしてください!私たちはサモアの自然や食べ物が大好きでその環境を保護することをとても重要視しています。サモアの文化は日本と似ているところがあるのですよ。例えば家族や目上の人を重んじる風習などはサモアと日本で共通しているところがあると思います」

たしかに家族を大切にする精神は似ているかもしれませんね。サモアの国民は日本人の気質に似ているところがあって、現地でもリラックスして過ごせそうですね!

サモアのアート

太陽のような笑顔のシラ大使の話を聞いていると、サモアの情景が浮かぶようでした。自国の自然や文化を大事にするという彼女の話を聞くと、私たちも日本の文化や伝統を再確認する必要があるということに気付かされます。異なる文化を持つ国に対する理解と尊重の精神を大切にしていくことは、国際交流が盛んな現代には一番重要なことではないのかと考えさせられました。 

 

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レポート:IAC学生記者団(メンバー紹介  五十音順)

岡本みな美 (Okamoto Minami) : 京都工芸繊維大学の1回生。機械工学を学ぶ理系女子で、カメラ片手に出かけるのが大好きです。

小阪真央 (Kosaka Mao) : 同志社大学の2年生。大学では主に英語を学び、新たな趣味としてタップダンスやギター、手芸に挑戦中。

清水彩加 (Shimizu Sayaka) : 関西大学の2年生。現在NZに留学中の変顔を得意とするユーモアの提供者。

清水悠加 (Shimizu Haruka) : 関西大学の2年生。現在中国の大学にオンライン留学中。ジャニーズが元気の源。

中根大周 (Nakane Taishu):近畿大学の1年生。最近コストコのマッシュポテトにはまり、体重の増加を懸念している。

福井彩乃 (Fukui Ayano) :上智大学2年生。最近は週一で美術館巡り。夢はジブリの世界に住むこと。夢想家。

森本裕也 (Morimoto Yuya):近畿大学2年生。元USJクルーで今はテレビ局スタッフ。フランス語を猛特訓中!

山崎あず咲 (Yamazaki Azusa) : ニュージーランドで落馬経験あり。フランスでパスポートを無くした経験あり。それでも旅行が大好き、国際教養大学2年生です!